鼻と肺はつながっている ― 慢性副鼻腔炎とアスピリン喘息

鼻づまりや鼻水が何か月も続く「慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)」。実は喘息と深く関係しています。アメリカ・シカゴのノースウエスタン大学で取り組んだ研究をもとに、鼻と肺の関係、そしてこれからの治療についてお話しします。

研究生活を送ったシカゴの冬(パステル画/院長 画)

慢性副鼻腔炎とは

鼻の奥にある副鼻腔(ふくびくう)という空洞に炎症が続き、膿や粘液がたまる病気です。鼻づまり、鼻水、頭痛、においが分かりにくいといった症状が3か月以上続きます。鼻の中に「鼻ポリープ(鼻茸)」ができるタイプもあります。

治療には、生理食塩水での鼻うがい、ステロイドの点鼻薬、抗生物質、飲み薬のステロイドなどを使い、近年は生物学的製剤(注射薬)も使えるようになりました。薬で十分に良くならない場合は内視鏡手術が検討されます。

鼻の病気と喘息の深い関係

鼻から肺までは一本の空気の通り道です。副鼻腔の炎症で生じた物質がのどに流れ込んだり、血液を介して全身に広がったりすることで、喘息を悪化させると考えられています。逆に、喘息の方の多くが副鼻腔炎を合併しています。

喘息を合併する割合は、目安としてポリープのない副鼻腔炎で約1割、ポリープのある副鼻腔炎で約半数です。さらに、鼻ポリープ・喘息・解熱鎮痛薬への過敏症の3つがそろう「アスピリン喘息」では、全員が喘息を持っています。

ご注意ください

アスピリン喘息の方は、アスピリンだけでなく、多くの市販の痛み止め・解熱薬(ロキソプロフェン、イブプロフェンなど)でも強い喘息発作を起こすことがあります。痛み止めや風邪薬を飲んで息苦しくなったことがある方は、必ず医師・薬剤師にお伝えください。

研究から見えてきたこと ― 鼻の洗浄液で炎症を「見分ける」

副鼻腔炎の鼻の粘膜では、外から入る病原体やアレルゲンを防ぐバリアが壊れ、好酸球・肥満細胞・好塩基球といったアレルギーに関わる白血球が集まってきます。ただ、これまでの研究は鼻の組織を切り取る「生検」に頼っており、痛みを伴うため気軽には行えませんでした。

そこで私たちは、鼻を生理食塩水で洗った液の中に含まれる、細胞由来の微小粒子を数える方法を開発しました(文献1・2)。痛みがほとんどなく、繰り返し検査できる方法です。

同じ「副鼻腔炎」でも、どの細胞が活発に働いているかはタイプによって大きく異なることが分かります。さらに、ポリープのある副鼻腔炎の方141人をこのパターンで4つのグループに分けたところ、3種類の細胞すべてが活発なグループでは喘息の合併が約9割と多く、手術後の再発による再手術も多いことが分かりました(文献3)。

「画一化医療」から「個別化医療」へ

同じ病名の患者さんに同じ治療をしても、効く人と効かない人がいます。バイオマーカーで炎症のタイプを見分けられれば、その人に合った治療を最初から選ぶことができます。これを個別化医療(プレシジョン・メディシン)と呼びます。

「同じ病名でも、一人ひとり違う」という考え方は、実は在宅医療にもそのまま当てはまります。次回は、在宅医療の現場で私が大切にしていることをお話しします。

参考文献

  1. Takahashi T, et al. J Allergy Clin Immunol. 2017;140:720-729.

  2. Takahashi T, et al. Allergy. 2020;75:3261-3264.

  3. Takahashi T, et al. AAAAI Annual Meeting 2023(口頭発表).

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